6.病期判定の続きと小児発達との対比

もうちょっと具体的な症状と、FASTならびにHDS-R、更に小児発達との関連を示します。*1を改変

臨床診断(ステージ) FAST MMSE HDS-R*2 臨床的特徴 小児における平均達成時期(私案)
軽度AD 4 19.6±3.9 19.1±5.0 年月日の感覚が不確か(時間の見当識障害) 6才
夕食の準備や買い物(必要な材料や支払い)で失敗 -
中等度AD 5 14.4±4.1 15.4±3.7 近所以外では迷子になる(場所の見当識障害) 6才
買い物を一人でできない 6才
季節や状況に合った服を選べず、他人の手助けが必要 4才
自動車を安全に運転できないことがある -
イライラ・大声などの感情障害や、興奮・不眠などにより、時に医師の関わりを要する 3〜4才
高度AD 6〜7 8.7±3.9 10.7±5.4 配偶者や子供が誰かわからない(人物の見当識障害) 1〜2才
家の中でもトイレの場所がわからない 2〜3才
【着替えに介助が必要】 4才
寝間着の上に普段着を重ね着したりする
ボタンをかけられない、ネクタイや靴ひもを結べない
【入浴に介助が必要】 3〜4才
お湯の温度や量を調節できない
体をうまく洗えない
風呂から出た後、体を拭けない
【トイレに介助が必要】 3〜4才
きちんと拭けないことがある
終わったあとに服を着られない
【尿・便失禁】 2〜3才
【言語機能・語彙の喪失】
話し言葉が途切れがちになり、単語・短い分節に限られてくる 2才
さらに進行すると、理解できる言葉が一つだけになる 1才
【歩行能力の衰退】 1才
ゆっくりとした小刻みの歩行になり、階段の上り下りに介助を要する

例えば初期AD(アルツハイマー認知症)のHDS-Rスコアは19.6±3.9とありますが、これは平均値±標準偏差です。すなわち、だいたい初期ADの方の70%が16〜24点の点数を示し、初期ADの方の95%が12〜27点の点数を示すということです。
結構幅があるわけで「XX点だから初期認知症」とかいうのはナンセンスで、病期の診断は、あくまで症状(日常生活の様子)で判断されます。ただし、同じ患者さんの経時的な変化を追うのにHDS-Rスコアは役に立ちます。
対応となる小児発達はご覧の通りです。これについては、次の項で掘り下げて記載いたします。

*1:Reisberg,B.et al.:Special Research Methods for Gerontology.Baywood.,195-231(1989)

*2:加藤・長谷川ら:老精医誌,2,1339-1347.1991