はじめに
千葉市の幸有会記念病院で、認知症外来(ものわすれ外来)をやっております。日常診療で気づいた事をゆるーく書いていきます。患者さんへの説明時間はどうしても限られますので、補足的にこのページを見てもらうといった目的もあります。記載の内容には、私見や個人的な感想が含まれますので、標準的な医療と乖離する場合があります。適切な診断・検査・治療は患者さん毎の病状によって一人一人異なりますので、このブログに記載された内容をそのまま当てはめるのが適切でない場合も多くあります。診断・治療については、まず主治医の先生にご相談下さい。ご質問・ご感想がありましたら、コメント欄(非公開)でお願いいたします。リンクフリー。著作権は放棄していません。
10.中核症状と周辺症状
定番の表です
中核症状は、認知症におよそ必ず出現する症状です(認知症の定義そのものの症状です)。
中核症状から、判断力の低下や、性格変化が引き起こされ、これまでの生活が成立しにくくなります。中核症状に関しては、アリセプト(ドネペジル)等の薬剤で、症状が緩和しますが、現在のところ完治させる治療はありません。
アルツハイマー型認知症の場合、だいたい決まって数時間前→数分前→昔の事 or 数秒前という順で記憶力が弱くなります。数分前の記銘保持が難しくなるのは、それほど認知症が進行した状況ではなく、むしろ比較的初期の段階です。5分の診察時間の中で、同じ話題を繰り替えすのは、自分が何を話したか(何を話していないのか)を忘れる為です。
したがって、忘れてしまうのは病気の為ですから、「努力しなさい」などの叱責等は無意味であり、まだ初期であり判断力などは保たれていることから、プライドを傷つけます。プライドが傷つくと、不安や怒りといった感情を引き起こします(周辺症状)。
やや高度の認知症になりますと、子供の数や性別も答えられなくなります。文脈や空気を読む能力はかなり最後まで残りますから、診療に同伴した家族のことは何となく家族だという認識が可能なのですが、医師が改めて関係性を問うと、自分の娘を「姉」と答えたりします。こんなことは正常加齢の物忘れでは、決してみられません。
周辺症状は、出るひともいれば、出ない人もいる症状で、本人あるいは介護者を困らせる症状です。環境の調整や増悪因子のコントロールにより、症状が緩和したり、消失させることができます。
例えば、一人暮らしで栄養不十分、睡眠不規則だった人が施設に入って良い介護を受けると消失したりします。また、不適切な薬剤投与や血圧の下げすぎ等が原因になることもあることから、それらの調節や、その他の体の病気の発見・治療によって良くなることもあります。
また、薬物療法で症状が緩和したり、消失することがあります。周辺症状は、怒りっぽさ等の「ハイパー」になるものと、うつ状態になったり等の「ダウナー」になるものの二つにわけられ、それぞれ選択される薬剤等の対応が異なります。
しかし、何をやっても良くならない場合もあることをご理解いただきたいと思います。例えば、部屋の中そこら中で放尿をしてしまうとか、食べ物でないものを食べてしまうとか、徘徊といった行動は、周辺症状とはいっても認知機能低下に由来する症状であり、認知機能症状を元通りにする治療は存在しない以上、良くならないケースも多くあります。お子さんにおむつを吐かせたり、異食をしないように口に入れては危ないものを手の届かないところに置いたり、迷子にならないように目を離さない等と同様の対応が必要になります。
周辺症状も、病気が引き起こす反応ですから、「物を盗られた」等の妄想に対して「自分がしまい忘れたんじゃない?」などと強く説得するのは禁忌です。2〜3歳児が「おもちゃをとられちゃった」と言う場面で「そんなことあり得ない」と繰り返し説得したりはしないと思います。「そうかな〜?気のせいじゃないのかな〜?」といった文言に留めて、一緒に無くなった物を探しましょう。しばらく探して見つからなければ、別のテーマに話題を変えたり、外出したりして、拘っている内容から気を逸らすのがよいとされています。
認知症の妄想は二次妄想ですので、「気持ちとしては理解できるものの、現実とは異なった訂正不能の誤った考え」が定義です。訂正不能なのですから、訂正しようとしても徒労に終わりますし、残念ながら説得内容もすぐに忘れてしまいます。病気を憎むが人は憎まず対応するのが原則です(とはいっても常時介護しているご家族は大変です)。
なお認知症の初期で出現する、不安を背景とした周辺症状は、認知症の進行と共に自然と消失する事も多いです。
9.年相応の物忘れと、認知症の違い
前項FAST Stage 2 は「年相応の物忘れ」にあたります。それでは、年相応の物忘れとは何でしょうか。
年相応の物忘れの特徴として、
- ふとした拍子に思い出す
- 物忘れの自覚はある(忘れたということは覚えている)
- 生活に支障は来さない
- 食事の内容は忘れるが、食事をした事は覚えている
等々です。想起の障害が中心で、神経病理学的にもアルツハイマー型認知症と一応区別できます。
一方、病的な(認知症を疑う)物忘れの特徴は以下の通りです
- 何度も同じ事を言ったり聞いたりする
- 物のしまい忘れがあるが、しまった事自体を忘れる(そして、盗まれたという)
- 出来事全体を忘れる
- ヒントやきっかけがあっても、思い出せない
- 昔のことは(よく)覚えているが、新しいことを覚えられないし、忘れる(初期の場合。晩期になると、昔のことも忘れていく)
年相応の物忘れにより直接的に影響を受ける能力には、以下のような説があります。*1
- 処理速度の低下:高齢になると、ゆっくり説明されないと理解できなかったり、テンポの速い作業について行けなくなったりします。これは、加齢と共に情報処理の速度が顕著に低下することに由来します。
- 作業記憶機能の低下:作業記憶の理論では、記憶には情報を貯蔵する部分と、処理するための容量・システムの部分があると仮定されていますが、高齢者ではとくに後者の機能が低下するといわれています。
- 抑制機能の低下:日常生活にはさまざまな情報があふれているが、われわれが目の前の仕事や作業を行えるのは、無意識的あるいは意識的に、関連する情報を選択し、関連のない情報が思考に入り込むのを制御しているためと考えられています(抑制機能)。このため、高齢者では気になった話題から離れられず目の前の話題に集中できないことや、他の忠告を聞かずに思いこみや早合点によって行動をとることがよくみられます。
次に、以下のグラフをご覧下さい。
*2
縦軸はIQで(WAIS-R, 教育年数で調整済み)、横軸が年齢です。
赤で示しているのが、動作性IQです。動作性IQとは、記憶力・集中力・計算力・処理速度などで、ピークは20〜24歳(プロサッカー選手の平均引退年齢は25歳)です。年齢とともに大幅に低下し、70〜74歳では80まで落ちてしまいます。これが、年相応(正常加齢)の物忘れに当たります。
青で示しているのが、言語性IQです。言語性IQとは、いわゆる「知恵」にあたるもので、ピークは55〜64歳にあり、年を取ってもほとんど低下しません。むしろ、年齢や経験を重ねると、若い頃にありがちな細部への拘りが消え、物事の全体がよく見通せるようになるかもしれません(プロスポーツの監督にはお年寄りもいますね)。
動作性IQ(上に示した赤のグラフ)に、長谷川式(HDS-R)を重ね合せるとこうなります。
自作の表のため、ルックスが悪いのはご容赦下さい。また、IQ・HDS-R・重症度の対応は雰囲気で捉えてください(学術データに基づいていない)。正常加齢のグラフ(赤)ですが、先の表では74歳までしかなかったので、適当に延長しています。100歳以上では全員認知症に相当する状態になるということを考えると、だいたいこんなもんでしょう。
例えば80歳の正常加齢だと、HDS-Rは大まかにいって25点以下にはならないわけです。ところが、(アルツハイマー型)認知症がはじまると、HDS-Rのスコアが平均2.5-3点/年低下するわけですから、黒の細いラインに乗りはじめることになります。そして、未治療の場合は10年で長谷川式0点,WAIS-R 0点になります。
ポイントは、
ということです。
8.更にFAST詳しく
以下に引用した表は、FAST Stageが高い(進行した)状態の変遷がについてより詳しく説明してあります。想定される期間や、「最後は寝たきりになる」ような事が書いてありますが、病状の進行は人によって差があります。また発症年齢によっては、末期のStageに至る前に、病気あるいは寿命により亡くなるケースも多いです。*1 *2
1 | 正常 | 50年 | 主観的および客観的機能低下は認められない | 5-10年前と比較して、職業上あるいは社会生活上、主観的および客観的にも機能低下はない | |
2 | 年齢相応 | 15年 | 主観的な機能低下はあるが、客観的な機能低下は認められない | 名前や物の場所を忘れたり、約束を思い出せないことがある | |
〃 | 主観的な機能低下は、親しい友人や同僚にも通常は気がつかれない | ||||
〃 | 職業上あるいは社会生活上の複雑な機能は障害されない | ||||
3 | 境界状態 | 7年 | 職業上あるいは社会生活上の複雑な任務に支障をきたしうる、十分大きな客観的機能低下を認める | 生涯で初めて重要な約束を忘れてしまう | |
〃 | (MCI) | 初めての場所への旅行のような複雑な作業を行う場合には機能低下が明らかになるが、買い物や家計の管理、あるいは行き慣れた場所への旅行など日常行っている作業をするうえでは支障はない | |||
〃 | 要求を求められるような職業的あるいは社会的環境から退いてしまうこともあるが、退いた後の障害は明らかではないかもしれない | ||||
4 | 軽度のAD | 2年 | 日常生活上の複雑な任務に支障をきたす | 客を適切に招待できず、半分の人をパーティの翌日に招待してしまう | |
〃 | 買い物で必要なものを必要な量だけ買うことができない | ||||
〃 | 誰かが管理しないと、勘定の計算を正しく行うことができず、重大な間違いを起こすことがある | ||||
〃 | 自分で衣服を選んで着たり、入浴したり、行き慣れた場所へ行ったりすることはできるため、介護なしで社会生活ができるが、単身で生活し、自分で家賃を支払っている場合、家賃の額を尋ねられると、低く答えてしまう | ||||
5 | 中等度のアルツハイマー型認知症 | 18ヵ月 | 適切な衣服を選ぶというような日常生活上の基本的な任務が行えない | 日常生活を自立して行えず、介護が必要となる | |
〃 | 介護者が家計や買い物の手助けをする必要があるし、季節と場所に合った衣服を選んであげる必要がある | ||||
〃 | いったん適切な衣服を選んでもらえれば、自分で適切に着ることができる | ||||
〃 | 定期的な入浴を忘れることもあり、入浴に説得が必要なことがあるが、自分で適切に入浴でき、湯の調節もできる | ||||
〃 | 自動車の運転が困難となり、不適切にスピードを上げ下げしたり、信号を無視したりする | ||||
〃 | 運転中、人生で初めて他の自動車に衝突してしまう患者もいる | ||||
〃 | 叫び声を上げたり、過活動性や睡眠障害のような感情障害により、しばしば危機的状況となり、医師の介入が必要になる | ||||
6a | やや高度のアルツハイマー型認知症 | 5ヵ月 | 不適切な着衣 | 寝巻の上に普段着を重ねて着てしまう | |
〃 | 靴ひもが結べなかったり、靴を履くときに左右を間違えてしまう | ||||
6b | やや高度のアルツハイマー型認知症 | 5ヵ月 | 入浴を一人で行えない | 湯の調節や浴槽への出入りができにくくなり、体も適切に洗えなくなる | |
〃 | 入浴後、体を完全に乾かすことができなくなる | ||||
〃 | このような入浴の障害に先行して、風呂への恐怖や抵抗がみられることがある | ||||
6c | やや高度のアルツハイマー型認知症 | 5ヵ月 | 用便を一人で行えない | 用便後、水を流すのを忘れたり、きちんと拭くのを忘れる | |
〃 | 用便後、下着やズボンを戻すのが困難となる | ||||
6d | やや高度のアルツハイマー型認知症 | 4ヵ月 | 尿失禁 | この段階の特徴は時に6cの段階で起こるが、6cより2〜数ヶ月後のことが多い | |
〃 | この時期の尿失禁は尿路感染症や泌尿生殖器系の障害なく起こるものであり、適切な用便を行う際の認知機能低下に起因する | ||||
6e | やや高度のアルツハイマー型認知症 | 10ヵ月 | 便失禁 | 便失禁は6cや6dの段階でみられることもあるが、この時期に認められることがより多い | |
〃 | 便失禁は尿失禁と同様に、用便に対する認知機能低下により起こる | ||||
〃 | 焦燥や明らかな精神病様症状のためにしばしば危機的状況を生じ、医療施設を受診することになる | ||||
〃 | 暴力的行為や失禁のために、家族は施設に入所させることを考えるようになる | ||||
〃 | 多くの患者が幻覚妄想状態になることがある | ||||
7a | 高度のアルツハイマー型認知症 | 12ヵ月 | 語彙が最大6語となる | ADの進行と共に、語彙の減少と会話能力の低下は進む | |
〃 | Stage4と5の段階で、無口になったり、会話が少なくなったりすることはしばしば認められ、Stage6では完全な文章を話す能力が次第に低下する | ||||
〃 | 失禁がみられるようになると、会話は単語あるいは短いフレーズに限られ、語彙は2,3語になってしまう | ||||
7b | 高度のアルツハイマー型認知症 | 18ヵ月 | 理解できる語彙がただ一つの単語となる | AD患者が最後に使用する単語は様々であり、患者により「はい」であったり、「いいえ」であったりする | |
〃 | すべての応答が「はい」であったり「はい」という言葉が肯定と否定の両方の意思を示すために使われることもある | ||||
〃 | 病期が進行するにつれて、最後の1単語も使用しなくなるが、何ヶ月後に突如その最後の1単語をはっきりしゃべることもある | ||||
〃 | 最後の1単語も使用しなくなると、ぶつぶつ意味不明のことを言ったり、大声を出すだけになる | ||||
7c | 高度のアルツハイマー型認知症 | 12ヵ月 | 歩行能力の喪失 | ADでは比較的早期から歩行障害が出現することがあるが、それは認知能力の障害によるもので、例えば歩行の速さが早すぎたり遅すぎたりすることはまれではない | |
〃 | Stage6では、歩行がゆっくりになったり、小刻み歩行をとったりし、階段の昇降に介助を要するようになる | ||||
〃 | Stage7の歩行障害は認知能力の障害ではなく、恐らく大脳皮質運動野の破壊に起因する | ||||
〃 | このStageの歩行障害の出現時期は多少様々である | ||||
〃 | 単純にゆっくりとした小刻みな歩行が進行する場合や、歩行時に前方、後方あるいは側方に体が傾くこともある | ||||
〃 | 体をくねらせて歩行することもある | ||||
7d | 高度のアルツハイマー型認知症 | 12ヵ月 | 座位保持能力の喪失 | 歩行能力を喪失しても、介助なしで椅子に座っていることはできる | |
〃 | 歩行能力の喪失1年後、介助なしでは椅子に座って居ることもできなくなる | ||||
〃 | この時期ではまだ笑ったり、噛んだり、ブツブツうなったり、握ることはできる | ||||
7e | 高度のアルツハイマー型認知症 | 18ヵ月 | 笑う能力の喪失 | この時期ではまだ眼球を動かすことができ、刺激に反応して眼球をゆっくり動かすことは可能であるが、見慣れた人や物を認識するとはできない | |
〃 | 把握反射、嚥下機能が保たれており、多くの場合、噛むこともできる | ||||
〃 | 刺激に反応して大声をあげる | ||||
7f | 高度のアルツハイマー型認知症 | - | 首がすわらなくなる | 主に食べ物を認識することができないため、経管栄養が必要となる | |
〃 | 音をたてることはできるが、発声は外的刺激により起こり難い |
次に、FASTと他の評価スケールとの関係を示します。
繰り返しになりますが、人によってこの通りにならない場合もあります。
*3 *4
7.『認知症疾患進展の法則性とヒトのnatural history』
『スフィンクスの謎「朝には四つ足、昼には二本足、夜には三つ足で歩くものはなにか」への答えは”ヒト”であるが、現代では”晩にはまた四つ足”を追加すべきではないだろうか。』
臨床をやっていて、漠然と考えていたことそのものスバリを、宇高不可思先生が老年精神医学会誌の巻頭言に寄稿して下さいました。すばらしい内容ですので、ご興味のある方は、ぜひ原文に当たっていただければと思います(老年精神医学雑誌2013年24巻3号224-226)。
ということで、この項はまるっきり引用に頼りたいと思います。
- 長生きすればみな認知症になる
- 日頃接する患者さんたちの姿は、自分たちの将来の姿である
- アルツハイマー病の進行は、個体発生におけるdevelopmental milestoneとほぼ逆の順に機能が失われる
- 病理学的にも、遺伝的に定められた髄鞘形成の順序とほぼ逆に病変が進行する。
- 脳波の基本周波数の変化・PETによる脳局所グルコース代謝の変化も発達を逆行する
- 脳血管性認知症の場合であっても、系統発生的に新しい部分から障害される
- 認知症疾患、とくにアルツハイマー病の場合は進化の過程の逆行という原則があてはまる*1
- 安直なアナロジーは慎むべきだが、BPSDに類似の症状は幼児の発達の過程でしばしば観察される*2
- 図は、ヒトの一生の姿勢と起立・歩行の遷延に関する模式図である。一度は発達した抗重力機構が加齢で弱体化し、歩幅や腕の振りの少ない高齢者歩行(↑)になるが、脳の病気でこの機構が破綻すると点線以下の病的な歩行・姿勢(*)を示し、最終的には重力に負けて胎児の姿勢と同じ、”大脳屈曲性対麻痺”にまで至る事を示す。責任病変は(略)前脳の広範な病変であり、全介助・失禁の寝たきり状態に戻るのは、起立、排尿、精神活動の中枢のいずれもが主として前脳に存在するからである。
6.病期判定の続きと小児発達との対比
もうちょっと具体的な症状と、FASTならびにHDS-R、更に小児発達との関連を示します。*1を改変
臨床診断(ステージ) | FAST | MMSE | HDS-R*2 | 臨床的特徴 | 小児における平均達成時期(私案) |
軽度AD | 4 | 19.6±3.9 | 19.1±5.0 | 年月日の感覚が不確か(時間の見当識障害) | 6才 |
夕食の準備や買い物(必要な材料や支払い)で失敗 | - | ||||
中等度AD | 5 | 14.4±4.1 | 15.4±3.7 | 近所以外では迷子になる(場所の見当識障害) | 6才 |
買い物を一人でできない | 6才 | ||||
季節や状況に合った服を選べず、他人の手助けが必要 | 4才 | ||||
自動車を安全に運転できないことがある | - | ||||
イライラ・大声などの感情障害や、興奮・不眠などにより、時に医師の関わりを要する | 3〜4才 | ||||
高度AD | 6〜7 | 8.7±3.9 | 10.7±5.4 | 配偶者や子供が誰かわからない(人物の見当識障害) | 1〜2才 |
家の中でもトイレの場所がわからない | 2〜3才 | ||||
【着替えに介助が必要】 | 4才 | ||||
寝間着の上に普段着を重ね着したりする | |||||
ボタンをかけられない、ネクタイや靴ひもを結べない | |||||
【入浴に介助が必要】 | 3〜4才 | ||||
お湯の温度や量を調節できない | |||||
体をうまく洗えない | |||||
風呂から出た後、体を拭けない | |||||
【トイレに介助が必要】 | 3〜4才 | ||||
きちんと拭けないことがある | |||||
終わったあとに服を着られない | |||||
【尿・便失禁】 | 2〜3才 | ||||
【言語機能・語彙の喪失】 | |||||
話し言葉が途切れがちになり、単語・短い分節に限られてくる | 2才 | ||||
さらに進行すると、理解できる言葉が一つだけになる | 1才 | ||||
【歩行能力の衰退】 | 1才 | ||||
ゆっくりとした小刻みの歩行になり、階段の上り下りに介助を要する |
例えば初期AD(アルツハイマー型認知症)のHDS-Rスコアは19.6±3.9とありますが、これは平均値±標準偏差です。すなわち、だいたい初期ADの方の70%が16〜24点の点数を示し、初期ADの方の95%が12〜27点の点数を示すということです。
結構幅があるわけで「XX点だから初期認知症」とかいうのはナンセンスで、病期の診断は、あくまで症状(日常生活の様子)で判断されます。ただし、同じ患者さんの経時的な変化を追うのにHDS-Rスコアは役に立ちます。
対応となる小児発達はご覧の通りです。これについては、次の項で掘り下げて記載いたします。